
The Film mate
【花に嵐】PFF2016年準グランプリ作品 やり方がわかるからやるんじゃないでしょ?やりたいからやるんでしょ? 独創的な作風でインディペンダント映画祭を席巻した問題作!!
⭐️⭐️⭐️⭐️☆/5点
今回はPFF2016年準グランプリ作品を授賞し、日本映画ペンクラブ賞の観客賞、カナザワ映画祭2016の観客賞&出演俳優賞も受賞した【花に嵐】を紹介したいと思います。
目次
監督
あらすじ
感想
まとめ
監督
今作でメガホンを取っているのは 岩切一空 監督です。
ヒカキン!!?
ではありません。
上の画像は今作を監督しました 岩切一空 監督です。
twitter: @i_isola_
HP: https://i-isola.tumblr.com
簡単に経歴を紹介しますと
早稲田大学文化構想学部在学中に自主制作映画のサークルに入ります。
卒業後、ENBUゼミナールに入学し池田千尋監督に師事します。
その後、今作の【花に嵐】を監督し数々の賞を受賞します。
2020年には齊藤工監督作品『COMPLY+-ANCE』にパ ート監督として参加しました。
ちなみに斎藤工さんからは直接Facebookで「花に嵐」の感想が送られてきてそこからご縁が繋がったそうです!
※ちなみに今作では監督が主演のような形で出演されています!!
あらすじ
起
主人公の岩切は、大学のサークルの新入生歓迎のイベントで映画サークルに勧誘される。
綺麗なお姉さんのありさ先輩に言われるがままに書類にサインをして、手を引かれ上映会に連れられる。その後断りきれず映画サークルに入ることに。
承
入部を決めると、それまで優しかったありさ先輩は態度が急変
「脂」というアダ名をつけられ、カメラを一台渡されカメラ日記のようなものを作ることに。
いつも騒がしい映画サークルで一人だけポツンと佇んでいる女性を見つける。
その女性の名前は古谷花。
新歓コンパで古谷先輩がこのサークルで一番有望な監督だと言われていたが、ある映画と撮ったことで映画を作れなくなってしまったと先輩から聞く。
その映画の名前が「花に嵐」であった。
その古谷から「花に嵐」のラストシーンを撮ってほしい、そのためにまず先輩の家の2階に行き小道具を取ってきてほしいと頼まれる。誰にも見つからずに。
なんとか小道具を持ち出し、車を盗み二人で向かう。
その日の泊まりのホテルで古谷がとった映画「花に嵐」の脚本を見る。
寂しい女の子の花子がクラスの女の子たちにいじめられている。2重人格の花子はもう一人の殺人鬼の人格が人を殺してしまう、、というものだった。
しかし実際は、古谷が監督することができずラストを変えられたことを古谷から聞く。ラストは、花子が殺人鬼の自分気がついたもう一人の花子が自分を咎め自殺するというものだ。
一方のありさは、主人公が使っているカメラと古谷が映画を作る際に使ったカメラが一緒だと気がつく。
転
ありさは、撮影中に死んだ洋子の幽霊がカメラに取り憑いているのだと気がつく。
急いで現場に向かう。
主人公と古谷は一緒に現場に向かうが、現場が近づくにつれて花子の様子がおかしくなる。そして飛び出し走ってどこかにいく。
その後ありさ達と合流し花子を探しにいく主人公。
結
花子を探していると包丁を持った花子、逃げ惑う三人。
気がつくと空の上にいる主人公。
捲し立てるようなエンディングが始まる、、、
感想
まず、初めて見たジャンルの映画でした。ドキュメントにフィクションを足して2で割ったような【フェイクドキュメンタリー】というジャンルの映画のようです。
監督が演じる主人公がいい感じの童貞感というか人慣れしていない感じがかなりリアル!!
説明的な補足はナレーションではなく、テロップの演出で補足していくスタイルも見やすくより一層ドキュメンタリー感が増しています。
フェイクドキュメンタリーですので、全部主人公の目線という主観で物語が進み、細かいカット割や景色や説明的な描写はないのですが、出演している女優さんがカメラ目線で話しかけてくるので没入感があります。
1.圧巻のタイトル登場演出
特に印象に残ったのはタイトルの出し方です。
「なんだっけあの映画、、、花に嵐」
そういうと奇妙な音楽が爆音でかかる。
ここは冒頭で10分くらい立っているのですが映画の世界に引きづり込まれました。
2.オタク的とも言えるほどのオマージュ演出
数々の映画オタク的なオマージュがされています。
そもそもこのフェイクドキュメンタリーというジャンルは白石晃士監督 が主にやっているジャンルでこの映画自体が白石監督のオマージュとも言えるでしょうが、最も顕著に現れたのはラストシーンです。
花が生死を彷徨う復讐劇の後、急に空を飛んでいる主人公。おそらく私を含めここで一気に置いてけぼりにされた感がありましたが、映画に深い造形があるひとはすぐにオマージュであると理解できたようです。
フェデリコ・フェリーニの『8 1/2』
アンドレイ・タルコフスキー『アンドレイ・ルブリョフ』
アレクサンドル・ソクーロフ『日陽はしづかに発酵し… 』
あまり日本映画ではみない演出のようですが、この自主制作というニッチなジャンルにおいて果敢に取り組んでいます。
3.信条が伝わってくるセリフ
「やり方がわかるからやるんじゃないでしょ?やりたいからやるんでしょ?」
花が童貞だと告げる主人公を無理やりセックスに誘うときにいうセリフだが、こんなにも納得したのは最近出なかったのでびっくりしました。
この定型のセリフはあと2つくらい出てきて監督が伝えていことがよく理解できます。
4.監督から感じる覚悟
上でも述べたようにこの映画の主人公を監督が演じています。なので監督はたまに顔出しをするのですが、そこには決して「かっこよく写りたい」「うまく演技したい」「嫌われたくない」などというような下心を一切感じません。
完全に嫌われ役に徹して自分を曝け出しています。
圧巻だったのはセックスシーンです。ヒロインの花とバスローブ一枚で濡れ場があるのですが、一歩間違うと監督が濡れ場をしたいだけとも批判されかねないシーンを堂々とやってのけるのです。その勇気と覚悟には感服いたしました!