
The Film mate
ワンダラー PFF 2019入選作品 どこにも行かない旅の答えとその理由とは
【ワンダラー】
⭐️⭐️☆☆☆
今回は2019年のぴあフィルムフェスティバルに入選した【ワンダラー】について紹介していきます。
この【ワンダラー】はPFFだけではなく、第20回TAMA NEW WAVEコンペティション部門・第30回東京学生映画祭コンペティション部門にも入選している良作です。
この【ワンダラー】は映画美学校のフィクション・コース第21期初等科修了制作セレクション作品です。
映画美学校の講師陣や一緒に講義を受講した生徒と一緒に作った作品と言えます。
後ほどにも触れますが、個人で撮影するには大規模でスタッフも大人数関わっているので映画美学校の協力が伺えます。
目次
監督
今作を監督、脚本したのは小林瑛美さんというまだお若い監督さんです。

こちらが小林監督です!
ちなみにTwitterのリンクはこちらです!
https://twitter.com/emi_kbysh?s=20
あらすじ
起
主人公の咲子は彼氏とデンマーク旅行に行くことになっていた。
しかし前日に彼氏に「仕事で行けない」と告げられる。
冷淡な彼氏に怒りを露わにしながらも、一人で行くことを決意する。
承
次の日、空港へ向かうために家を出るが道半ばで引き返し家に戻る。
フライトを明日にずらし、彼氏にもネットで調べたコペンハーゲンの写真を送り、旅行に来ていると嘘をつく。
転
旅行に行っている設定の咲子は道端で旅行をしている女性、萌に話しかけられる。
萌は財布をなくし困っていたので咲子の家に案内することに。
咲子は萌に自分がデンマークにいることになっていることを告げる。
萌はその設定をあっさりと受け入れ、自分もその設定の世界観に入り込むことに。
恋人から電話がかかってきて出張の期間が伸びたことを知らされてた咲子は、次の日も萌と行動を一緒にすることを決める。
デンマークの隣のスウェーデンに行くことにしたという設定で萌と共に山奥にキャンプに行く。
「明日どこ行く?」
「どこ行っても楽しいよ」
その会話をその日の最後に交わして眠りにつく。
翌朝、咲子が目を覚ますと隣には萌はいない。
布団を畳んで別れの手紙を書いて出て行っていた。
結
彼氏に電話をする咲子。
自分も変わるから彼氏にも態度を改めてほしいと告白する。
彼氏も了承し「帰ってくれば?」と提案する。
咲子は「もう少し一人でいたほうがいい気がする」と告げ電話を切る。
最後から二番目のカット
デンマークかスウェーデンであろう外国の街並みをバスに乗っている主観映像が流れる。
最後のカット
ホテルのベットで誰もいないベットを映し出して終わる。
感想
こんなことをこの時代に言うと差別的だという方もいらっしゃるかもしれませんが、、、、
いい意味で、女心を表す女性監督ならではの作品でした。
男性監督だと男性目線の話になりそうですが、
今作は明らかに恋に悩む女性の感情に焦点がいっており、何も聞かされなくても女性監督の作品だと判別できるでしょう。
受賞したPFFや他の映画祭でも、女性の恋心とかプライドとか男性監督の作品にはない視点が評価につながったのではないでしょうか。
この手の作品は監督の体験からくるものが多いので、おそらく監督の実体験から来ていると私は予想しています。
監督が実際に彼氏に旅行をすっぽかされたりとか、相手にされなかった経験などが生きてきているのでしょうねー。
カメラワークなどは「ひき」の画が多用されており、
そこまでカット割も細かくないので見やすいなとは思いました。
こんな人におすすめ
これから映画祭の受賞などを目指しているが、どのレベルだと受賞できるのかわからない人にはお勧めします。
カメラも大体のカットがフィックス(固定)で撮られていたので、そこまで高度で難しい撮影スキルは多用されていないことを考慮すると、
カメラワークのスキルに不安に思いながら自主制作映画を作ろうとしている皆さんには、この作品のカメラワークは非常にいい作品なのではないかと思いました。
疑問に思ったこと
あまり説明的なことはセリフでもなく不明なこともいまいち解明できないこともありました。
なぜ咲子は一人でデンマークに行ったという嘘を彼氏についたのか?
おそらく一人では行けないと言うのがプライド的に許せなかったのかと推測しています。
なぜ萌は何も言わずに咲子を残して去ったのか?
特に深い意味はないのかもしれません。これ以上いると気を遣わすと思ったのでしょうか。
最後のデンマークかスウェーデンの街内のカットとホテルの部屋のカットの意味
最後に主観で外国の街並みをバスから眺めるシーンと、ホテルのベットを眺めるというシーンがあるのですが、あれは咲子が一人でデンマークに旅行に行ったということでしょうか。だとすれば一人で旅行に行けなかった咲子が最終的には一人で旅行に行ったと言うことで納得がいきます。もしそうだとしたら、最後の誰もいないベットを映し出した意味は何かあったのでしょうか。
まとめ
今作を一言で表すなら
彼女がどこにも行かない旅に出た理由
と言えるでしょう。
見ている人たちはその理由を探し、わかったときに共感や応援という気持ちを持つことができるのでしょう。
また作品自体は結構予算もかかっているものと思われ、スタッフも自主制作にしてはかなりの人数が関わっていることを踏まえれば、映画祭で受賞する映画はこのくらいの規模かんでやらなければいけないという参考にもなリマス。
よろしければぜひ見てみてください!