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PFF徹底分析【青〜chong〜】李 相日監督の出世作!在日朝鮮人の葛藤を描いた青春物語が日本映画界に評価された理由。

あらすじ(ネタバレあり!!)


朝鮮人として誇り高く生き、朝鮮人同士の結束を大切に”と両親に育てられてきた在日三世の大成は、朝鮮学校に通う高校3年生。親友の玄基とつるんでは、なんとなく毎日を過ごしている。ところがある日、姉とチョッパリ(日本人)の結婚話や、幼なじみの奈美にチョッパリのボーイフレンドがいるという噂話を聞かされ、少なからず動揺。しかも、野球部のエースとして出場した日本の高校生との親善試合で大敗を喫し、自信も失ってしまう。玄基が止めるのも聞かず野球部を離れる大成。彼は、生まれて初めて朝鮮人でも日本人でもない自分を見つめ直すことに。そんな中、奈美の大事にしていた楽器・ヘグムの弓を壊した不良グループに仕返ししてやった大成は、奈美に野球を再開するように勧められる。そして予選試合の日。朝鮮人であること、自分らしく生きていくことに目覚めた彼は、晴れやかな表情でマウンドに立つのだった。

引用(https://eiga.com/movie/40315/)


監督

李相日

1974年、新潟県に生まれる。在日朝鮮人三世で、父は新潟朝鮮初中級学校で教師をしていた。4歳の頃、一家で横浜に移り住み、横浜の朝鮮初級学校中級・高級学校に通った。高校3年に進級するまでは野球部に所属した。私立神奈川大学経済学部卒業間際に、アルバイトでVシネマの製作に参加したのがきっかけとなり、卒業後、日本映画学校(現・日本映画大学)に入学。

卒業制作作品『青〜chong〜』がぴあフィルムフェスティバルでグランプリを含む史上初の4部門を独占。その後、数年間フリーの助監督として活動し、シネカノン李鳳宇が企画・製作した2002 FIFA World Cup Korea/Japanのドキュメンタリー映画では、何台かあるカメラのうちの一台の撮影も担当している。

第12回PFFスカラシップ作品として制作された『BORDER LINE』で、最も将来性を期待できる監督に与えられる新藤兼人賞金賞を受賞するなど高い評価を得て、原作・村上龍 × 脚本・宮藤官九郎69 sixty nine』の監督に抜擢。『スクラップ・ヘブン』の後、『フラガール』で、第80回キネマ旬報ベストテン・邦画第1位及び第30回日本アカデミー賞最優秀作品賞および文化庁芸術選奨新人賞を受賞。

「引用wikipedia」




キャスト

  • 楊大成-眞島秀和

  • 趙玄基-山本隆司

  • 尹奈美-竹本志帆

  • 李青福-有山尚宏

感想

まず一言で「青〜chong〜」を見終わった感想を言うと完成度が高くて驚いた、です。

PFFは間違いなく日本で一番有名でレベルの高いアマチュアの映画祭ですが、やはりそこはどうしてもアマチュアです。たとえ受賞している作品だったとしても、どうしても素人感の抜けないカメラワークや編集が多々あります。

それは監督やスタッフに限ったことではなく演者にも言えることです。しかし、この「青〜chong〜」ではそれは全く感じられず、このまま商業映画として公開しても十分にお金が取れるレベルだといえるでしょう

監督した李相日監督はこの作品の後、「悪人」「フラガール」など数々の大作を手がけることになるのですがそのセンスの片鱗が見え隠れしています。デビュー作でここまで完成度が高くできる能力に驚きを隠せません。

日本映画学校の卒業制作として制作されたそうですが、しっかりと学校のシーンは学校で撮り野球のシーンは球場で撮影されています。自主制作をしている方なら分かると思いますがアマチュア監督にとって一番のお金の出口は場所代です。学校を借りるにしても小さな教室を1時間借りるだけで何十万もすることもあるのです。しかし、そこは天下の日本映画学校。何かしらのコネクションで借りられることができたのでしょう。

さて、内容ですが、ストーリーは青春物語系の話で在日韓国人の男の子が差別に悩み野球を辞めるも周囲の人との関係を通してもう一度やる気を出し甲子園に出場すると言う物語でした。在日韓国人の差別問題を扱った作品は珍しいにせよ、この一見よくありそうなストーリーでなぜPFFでグランプリを含む4冠を獲得することができたのか、徹底解剖していきたいと思います。


徹底解剖〜

理由❶

在日朝鮮人という珍しいテーマ

本作のテーマは在日朝鮮人の差別のなかで苦しみながらも青春を謳歌するというものです。

タイトルの「」日本語ではあいつまだ青いなーなど、若さを表す単語ですね。

一方で、韓国語読みで「chong」というのは日本で在日朝鮮人を揶揄するときに用いる差別用語です。

このことからタイトルの「青〜chong〜」はダブルミーニングになり高校生の未熟さ、若さを表す意味と、日本で差別されている朝鮮人の意味を表します。

監督の李相日監督も在日朝鮮人3世でこのような葛藤に悩まされたのでしょう。

この在日朝鮮人の差別という珍しいテーマが評価対象になったことは明らかです。

一つ言えることは、この映画を見てだったら私も在日朝鮮人の映画を撮ろうとは思わないことです。映画を脚本するときに自分の原体験となることが種になって話を進めるのはいいことなのですが、それがなくただ単に注目されそうだから、審査員受けが良さそうだからという理由だけで無理矢理作ろうとすると表面的で浅はかなものになってしまいます。

李相日監督にとっての在日朝鮮人問題がそうであったように自分のうちから出てくるものをテーマにした方が見ている人に感情移入してもらいやすい作品になることは間違い無いでしょう。


理由❷

自主制作と思えない高い完成度

編集やカット割りなど素人の匂いが感じられる要素はほぼなく、このまま金曜ロードショーなどでOAされてもおかしく無いクオリティでした。

後にプロの撮影監督になる早坂伸が撮影監督としてキャスティングされていることも理由の一つでしょう。

彼だけでなく主演の眞島秀和も俳優として今でも活躍し続けていることを考えれば人選も巧みだったと言得ます。

日本映画学校の卒業制作ということだったので、撮影の場所などもきっちりしておりプロの制作陣たちがサポートしたことが垣間見える高クオリティの作品です。逆にきちんと時間をかけてやればこれくらいのクオリティは自主制作を目指す皆さんにとっていい教科書になるでしょう。


理由❸

映像だけでは無いこだわり

映像だけでなく、作り込まれた音楽が作中の要所要所で散りばめられています。PFFのグランプリだけでなく音楽賞も受賞したことも納得です。音楽を担当したのは坂本健さん。

ウィキペディアで調べると政治家となっていますが、多分違う人物だと思います。もし同一人物なら華麗なる転身ですね!


理由❹

北野映画の影響を丸出しにした作家性

北野映画の影響を多分に受けそれを全面に出していることは李相日監督も認めています。

  • 冒頭のケンカシーン

冒頭のケンカのシーンでケンカ相手がカメラ目線で

お前ら本当にチョン高生なのかよ? チョン高て言えばビビると思うなよ。証拠を見せろ、証拠を」

誰に話しているのかわからずしばらくすると主人公たち在日朝鮮人に話しているということが描写されます。

この冒頭で主要キャラを写さず、しばらく間を取ってから主要人物をカットバックするというやり方は北野映画でよく見られる方法です。

  • コンビニのシーン

コンビニでバイト仲間を暴行するシーンがあります。まず時間経過を表すために子供の入店を映し出し、その子供がレジに来る頃にはバイト仲間は暴行され倒れています。このあえて暴行するシーンを映さないという手法も北野映画の「ソネマチ」のエレベーターのシーンで見られました。エレベーターで暴行が行われている映像は写さずあえて別の風景映像などを流し、エレベーターが開くと武だけが立っており残りの人たちは倒れているというものです。


まとめ

在日朝鮮人であることが嫌で、その葛藤を描いた作品ではなく映画のセリフでもあるように「生まれ変わっても朝鮮人でありたい」というのがこの映画のメッセージだと強く受け取れました。日本でいると朝鮮人で、韓国に帰ると日本人とみなされる。俺たちは一体何人なんだろうなというアイデンティティの曖昧さに悩むもしっかりと物語が終わる頃には答えを出します。こうしたブレないテーマの一貫性というものも評価の対象になったのでしょう。


ちなみに李監督は韓国人としてのアイデンティティのおかげか、監督した「悪人」をパラサイトのポンジュノ監督と一緒に鑑賞し、


またいつかはソンガンホさんと一緒に仕事がしたいとインタビューで答えています。


「クワイエット・ファミリー」のプロモーションのために来日したソンガンホさんのアテンドを韓国語ができるという理由でアルバイトとして雇われた際に、一緒にお酒を飲み家族の写真を見せてもらって仲良くなったそうです。


いつか企画が成功するといいですね!



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